会社ブログやお店ブログにはこれを書く|中小企業向けの書き方と実践的方法

読まれる、反応がある、集客や商談につながるなど、手応えを感じる会社ブログの書き方、題材(ネタ)の考え方を、中小企業診断士が具体的で実践できる方法を含めてお伝えします。

目次

会社ブログには顧客が求めていることを書きましょう

自分が書けることではなく、顧客が求めていることを

会社やお店のブログを書こうとすると、とにかく書くことを優先してしまい、また、ブログの題材(ネタ)も、それほど考えつくものではありませんので、とにかく書けることを見つけて書いてしまうことがよくあります。これが読まれない、反応がないブログになる原因です。大切なことは、会社ブログには「相手が求めていることを書くこと」です。なお、この記事での「顧客」とは、会社やお店の「未来の顧客」のことです。

自分に書けることを顧客に寄り添うイメージで

もう少し丁寧にお伝えすると、書けることを「書いてはいけない」のではありません。書けることを「顧客が求めていることに寄せて書く」、つまり「顧客に寄り添う」というイメージで捉えてください。

図1:書けることを書くイメージ
図2:顧客に寄り添うイメージ

消費者の場合は体験できることを書きましょう

顧客が消費者の場合は、商品やサービスそのものではなく、商品やサービスを利用する過程で「体験」できることを書きます。例えば旅行の場合は、目的地への移動や宿泊だけではなく、もてなしへの感動や旅先で目にしたものへの驚きなどの「体験」があります。商品やサービスを通じて「体験」できることを書くと、手応えのある会社ブログになります。

事業者の場合は業務上の課題が解決できることを書きましょう

顧客が事業者の場合は、御社が提供している製品やサービスの機能や仕様そのものではなく、その製品やサービスによって顧客の事業上の課題を解決できることまで踏み込んで書きます。例えば計測器を提供している場合、その性能が従来比で高まったことでの顧客の事業の生産性の向上などを題材に選んで書きましょう。

会社ブログは顧客が求めていることを書く理由

自分が書けることではいけない理由

インターネット上には膨大な情報があります。ですから顧客は、自分が求めている情報がどこかにあるはずだ、という姿勢で検索します。その姿勢を言い換えると「わがままでせっかち」です。ご自身が検索する場面を思い起こしていただければ納得していただけるでしょう。わがままでせっかちですから、書き手が書けることで書いた記事を自分の求めていることと「照らし合わせて解釈する」ような手間はかけません。自分には相応しくない情報である、と瞬時に判断して次の情報を探します。ですから、会社ブログには、自分が書けることではなく、相手が求めていることまで踏み込んで書く必要があるのです。

消費者は体験できることを探している

ご存知の通り、現在は商品やサービスが溢れています。消費者は商品やサービスそのものが持つ価値ではなく、それらの購買や利用を通じて得られる「体験」に価値を感じるようになりました。例えば、クルマの場合、一昔前は所有の喜びが中心でした。ところが現在では所有だけではなく、購入前の広告接触やディーラーとの対話による期待感、購入後のドライブの楽しみ、さらにアフターサービス時の納得感などから得られる一連の「体験」に価値が評価されています。先に挙げた旅行の場合も同様です。ですから消費者には「体験できること」を書くと、探しているものと合致した情報になるのです。

事業者は業務上の課題解決策を探している

顧客が事業者の場合は消費者と異なります。一昔前までは調達に関わる担当者は会社に出入りしている営業マンから情報を仕入れていました。ところがインターネットの普及とともに、営業マンに会う前に必要な情報をインターネットで収集するようになりました。つまり、調達に関わる担当者は業務上の課題解決策を探していると言えます。コロナ禍でリモート業務が広がるとこの傾向が一層強まりました。現在では、インターネットに情報が載っていない会社の営業マンには声がかからないとまで言われています。インターネット上にはさまざまな情報が溢れていますから、自社の課題解決に直接結びつかない情報は選ばれないことになります。

会社ブログの実践的な考え方と書き方

消費者の場合、5つの視点で考えてみる

先に述べた「体験」には期待、感動、驚きなどの心理的・感情的な価値があります。
心の動きに関する価値は、研究では人の五感を刺激する感覚的な価値、人の感情に訴求する情緒的な価値、人の知的欲求に訴求する知的な価値、新しい体験などの行動に訴求する行動・ライフスタイルの価値、特定の集団に所属する誇りなどの社会性の価値という5つの種類があるとされています。この種類を利用すると、会社ブログの題材は考えやすくなります。

心理的・感情的価値の種類

価値の種類内容
感覚的視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感を刺激するもの。
「美しい」「美味しい」など。
情緒的顧客の内面の感覚や感情に訴えるもの。
「かっこいい」「かわいい」「信頼できる」「魅力的だ」など。
知的顧客の創造性や知的欲求に訴えるもの。
「興味深い」「勉強になる」など
行動・ライフスタイル行動やライフスタイルに訴えるもの。
「やってみたい」「挑戦したい」など。
社会性特定の集団や文化に所属しているという感覚を訴えるもの。
「誇り」「特別感」など。
表1:心理的・感情的価値の分類(出展1を参考に執筆者が作成)

例えば、鮮魚店の場合

鮮魚の小売店(魚屋さん)が会社ブログ(お店ブログ)を書く場合、産地や鮮度、値段などの情報をそのまま書くのではなく、例えば、脂がのっている旬のおいしさを味覚(五感)に訴えかける、それを新しい調理方法で口にする新しい体験を紹介する、漁場の様子を紹介して知的欲求に働きかける、毎朝市場に出かけていることを美しい明け方の様子を紹介して情緒的に訴える、などの方向性が考えられます。

図3:鮮魚店の場合

共感できる情報も加えてみましょう

人が持つ感覚や情緒、知的欲求などには「共感」も関わってきます。
共感とは相手と同じ気持ちを感じることとです。研究では、共感は親しみと深いつながりがあるとされています。親しみは気持ちの距離を縮めますから来店や購買にも繋がりやすくなりますので、共感してもらえるように書くことも大事です。
共感の種類には、相手と同じ感情を共有して同じ感情を体験する情緒的な共感と、相手の考え方や価値観を認める認知的な共感があるとされています。

共感の種類

共感の種類内容
情緒的共感相手と感情を共有して同じ感情を体験する共感。
「大変だったね」「嬉しいね」など
認知的共感相手と同じ考え方や価値観であると、想像や類推することで感じる共感。
「なるほど、そうだね」など
表2:共感の分類(出典3を参考に執筆者が作成)

この分け方を参考にすると、情緒的共感には「商品の開発にともなう苦労ばなし」などの紹介などが向いており、認知的共感には「商品を開発した目的や意図などの紹介」などの方向性が考えられます。

事業者の場合は、生産の3要素やマーケティングの4要素で考えてみる

生産に関する課題は、品質の実現や向上、コストの削減、納期の短縮に関するものが代表的です。具体的には不良の削減、狙いの性能の達成、環境対応、材料や部品の在庫の適正化などの視点が考えられます。マーケティング(販売)の要素では、製品ラインナップ(品揃え)の充実、販売先の拡大、販売価格の向上、新規顧客獲得などの視点があります。
これらの課題解決を実現することを会社ブログの記事で訴求すると、相手が求めている情報に合致します。

  1. 生産の3要素
    • 品質(求められた品質の実現、品質の向上)
    • コスト(定められたコストでの生産、コストの削減)
    • 納期(定められた期間での生産、短納期化)
  2. マーケティングの4要素
    • 製品ラインナップ(品揃え)の充実
    • 販売先の拡大
    • 販売価格の向上
    • 販売促進の強化(販売数量の拡大、新規顧客の獲得)

部品メーカーの場合

例えば、部品を収めている会社の場合、新しい製品の性能や納期、価格などの情報をそのまま書くのではなく、例えば、高強度なので、先方の狙いの品質の実現が可能になること、短納期対応できるので、先方の製造リードタイムの短縮に貢献すること、などの方向性で書くと、顧客が知りたい内容に沿ったブログになるでしょう。

図4:部品メーカーの場合

お伝えしたかったこと

客観的な視点を持つ第三者の活用

読まれる、反応がある、集客や商談につながるなど、手応えを感じる会社ブログの書き方、題材(ネタ)の考え方を具体的で実践できる方法を含めてお伝えしてきました。

理屈はわかったけど「やっぱり相手のことはよくわからない」という場合は、客観的な視点を持つ第三者への相談も検討してはいかがでしょう。

出典

  1. 田中達雄「CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略 顧客の心とつながる経験価値経営」東洋経済新報社、2018年、P40
  2. Instagram「好きと欲しいをつくるInstagram」、Meta、2021年12月8日、https://business.instagram.com/blog/house-of-instagram-japan-2021?locale=ja_JP、2023年8月1日参照
  3. 山竹伸二「共感の正体」河出書房新社、2022年、P 93他
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