【実践的】補助金の申請書が求める「自社の強み」の見つけ方と書き方

強みはどんな会社にもあります。補助金申請書の「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」の見つけ方や書き方を、中小企業診断士が実践的にお伝えします。

    お伝えしたいこと
    • 強みは必ず見つかります
      • 強みは、いきなり「特別な何か」を探しに行くと見つかりません。普段「できていること」や「あたりまえ」と思い込んでいるところに原石として隠れています。見つけたら再現性や持続性で選別すると御社の強みは現れてきます
    • 例示+つまりの構造が書き方のポイントです
      • 見つけた強みはそのまま書いても審査員には伝わりにくい場合があります。彼らの共通言語である「キーワード」を使って「つまりこうです」とまとめると、理解しやすい表現になります。
    目次

    自社の強みは「特別な何か」ではない

    自社の強みとは、特長や長けている点のことです

    そもそも「強み」という言葉自体に違和感を覚える方も多いでしょう。普段なかなか使わない言葉ですから。例えばサッカーの試合で、監督や解説者が「チームのストロングポイントを活かして…」と語ることがありますね。ストロングポイントとは、そのチームの特長や長けている点です。「強み」も同じで、会社の特長や長けている点のことです。

    「特別な何か」を見つけようとすると、見つかりません

    強みとは何のことかわかったけど、やっぱりウチには特にないなあ、とお感じではありませんか。「強み」とか「長けている」と聞いて「特別な何か」を見つけようとしていませんか。誰にも負けない特別なものでなくても、お客様に応えられる事柄があれば、それが「強み」です。

    それでも見つけにくいとお感じになっている場合は、実験として会社ではなくご自身のことを考えてみましょう。簡単なワークです。それは『今日「良かった」と思えることを、五つ思い浮かべてください』というものです。

    すっと5つ思い浮かんだ方はコツを掴んでいます。でも多くの方は「5つもないよ」と思ったことでしょう。大丈夫、殆どの方はそうです。このワークで大事なのは「とにかく5つ」考えることです。試しに「良かった」のレベルを下げてみてください。特別な何かではなく「小さな良かった=できたこと」を見つけることがコツです。例えば私なら「予定通りに起きることができた」「家族と食事できた」「ブログに記事を投稿することができた」などをあげるでしょう。このように「できたこと」なら5つあがるのではないでしょうか。

    会社についても同じです。長く続いていること、納期遅れがない、製造事故がない、Aさんは10年来のお客様だ、のように、特別な何かではなく「できていること」をあげてください。ここで見つけたものが「強み」の原石です。原石は選別が要るので5つでは足りません、できる限り多く(少なくとも10や20)の原石を見つけましょう。コロナ禍で様子が変わったかもしれませんが、会社の基本的な強みを考えるのでコロナ前に遡っても構いません。

    「今そこにあるもの」に強みが隠れています

    「できていること」の影に強みは隠れています

    上記のワークで「できていること」がいくつかでたら、それらを支えている要因を考えてください。例えば「納期遅れがない」のは納期管理担当Cさんの仕事の成果なら「当社は納期管理に長けている」と言ってよいでしょう。このように強みは人の仕事ぶりに隠れていることがあります。

    「あたりまえ」の影に強みは隠れています

    また、異物混入などの「事故がない」のであれば、普段の品質管理の工程がしっかり働いているのではありませんか。この場合「品質管理に長けている」と言えます。事故がないのは「あたりまえ」かもしれませんが、その「あたりまえ」を実現している仕事に強みは隠れていることがあります。

    「お客様の声」の影に強みは隠れています

    10年以上もAさんがお客様でいてくださるのなら、御社に存在する何かが評価されているはずです。このような場合にはAさんに聞いてみましょう。「実は・・・」「言ってなかったけど・・・」。お客様の声からは思ってもいないことが評価されていることがよくあります。

    再現性、持続性でふるいにかける

    このように考えていくと御社の「強み」の原石は見えてきます。中には「これはどうなの?」というものも含まれていることがあります。たまたま「できたこと」かもしれないものなどです。ですから、見つかった原石は「再現性」(次もできるのか)や持続性(続けてできるのか)でふるいにかけて選別してください。再現性や持続性があるならその裏には「仕組み」や「ノウハウ」があるはずです。「しばらく苦労してきて、今回ようやくできたことだけれど、次もできそう」であるなら再現性があります。それは有望な強みとして残してください。

    見つかった強みの書き方

    読む相手を意識して書きましょう

    ここからは、選別した強みの書き方についてお伝えします。
    ここでの「書き方」とは補助金の計画書への書き方ですから読む相手がいます。つまり審査員です。審査員は生産や販売、会計など経営に関する有識者が選ばれています。有識者は全ての業種業態に詳しいわけではありませんので、彼らが使う「経営的な共通言語」を意識して書くと理解しやすい計画書になるので、採択の可能性が高まります。

    キーワードを使うと表現レベルが上がる

    審査員である有識者が使う経営的な共通言語とは経営学などで使われるキーワードのようなものとして捉えてください。例えば、強みを表すキーワードは、製造の分野では開発力、生産力、品質管理能力、短納期対応力、販売の分野なら顧客対応力、販売力、商品力などです。お気づきかもしれませんが、共通しているのは○○○力という書き方です。「力」を加えると能力を端的に表現できます。また、その能力を生み出す仕組みを表す「体制」や「ノウハウ」なども使いやすいキーワードです。手元にあるビジネス書などを開くとサンプルが見つかると思います。

    例示+つまりの構造で書く

    見つかった強みは御社で確認できた事象なので、具体的ではありますが一方で実態は様々です。審査員は全ての業種業態に精通しているわけではありませんので、見つかった強みをそのまま書くと理解が追いつきません。ですから少し一般化(抽象化)して「つまり」とまとめることがポイントです。そしてつまりとまとめる際にキーワードを使います。「つまり、あなた方の言葉で言うとこうです」とまとめることで審査員の考えにレベルを合わせるのです。

    例示+つまりの実践例

    例示つまり
    10年来異物混入などの事故がありませんので品質管理力が強みです
    配達が遅かったなどのクレームがありませんので納期管理力が強みです
    初めての方にもわかりやすいと言ってもらえますのでレッスンのノウハウが強みです

    お伝えしたかったこと

    強みは必ず見つかります

    強みは、いきなり「特別な何か」を探しに行くと見つかりません。普段「できていること」や「あたりまえ」と思い込んでいるところに原石として隠れています。見つけたら再現性や持続性で選別すると御社の強みは現れます。

    例示+つまりの構造が書き方のポイントです

    見つけた強みはそのまま書いても審査員には伝わりにくい場合があります。彼らの共通言語である「キーワード」を使って「つまりこうです」とまとめると、理解しやすい表現になります。

    第三者への相談のすすめ

    自分のことは、自分ではなかなかわからないものです。人から指摘されて初めて気がつくことがあります(お客様の声などはそうですね)。社内だけでは取り組みにくい場合は、中小企業診断士など客観視できる第三者への相談もお勧めします。

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