SNSの投稿が響かないと悩んでいる経営者は多いのではないでしょうか。商品やサービスの紹介を熱心に投稿しているのに、なかなか「いいね」やコメントが集まらない。そんなジレンマを抱えている方に、まずお聞きしたいことがあります。
それは、SNSの本質とは何か、ということです。
SNSの本質は「人」と「人」をつなぐこと
SNSは、人と人とのコミュニケーションのためのツールです。友達や知り合いとの間で、日々の出来事や個人的な思い、そして様々な感想を交換する場として広く使われています。
では、「響く」とはどういうことでしょうか。それは、投稿を見た人が共感することと言っていいでしょう。共感、すなわち同じような感情を持ったり、相手の気持ちを理解したりすることで、「いいね」やコメントといったリアクションが生まれるのです。1
このことから、投稿が響かない理由が見えてきます。それは、読み手の気持ちが動かないということ。SNSは本来、人々が日常や思いを共有する場なので、企業やお店からの一方的な商品紹介では、なかなか相手の心に届かないのです。
では、どうすれば読み手の気持ちを動かせるのでしょうか。その手がかりを、意外なところ…アート(美術作品)と作者の関係から探ってみましょう。
今回紹介するのは「妄想美術館」(原田マハ、山崎マリ、SBクリエイティブ、2022)。この本では、敷居が高いと思われがちなアートも、作家の人物像や想いを知ることで途端に親しみやすくなることを教えてくれています。
作品の向こう側にある作家の人間ドラマ
例えば巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。皆さんは完璧主義のイメージを持っているかもしれません。でも、実は意外な一面があったのです。
原田 一生のなかでレオナルドの気分が乗ったのは、数回しかなかったってことになるのかな。
(第4章 未完の魅力への憧れ)
ヤマザキ 《モナ・リザ》だけは気に入っていて、レオナルド本人が最期まで持っていたと言われていますが、自分が描きたい人ばかり描くから、どの絵もみんな同じ顔をしています。これは漫画家にも多く見られる傾向だと言えます。
そして、もっと意外なエピソードも。
それからレオナルドについては、人の悪口ばかりが書かれているあの手帳も残ってますよ(笑)。ボッティチェッリのことをデブのメロンなんて書いていて、きっと工房で一緒だったときに気に入らなかったんでしょうね。
(第4章 未完の魅力への憧れ)
なんだか親近感が湧いてきませんか?完璧な巨匠のイメージとは違う、人間らしい一面を知ることで、レオナルドという人物がぐっと身近に感じられます。
商品の向こう側にある「中の人」の人間ドラマ
これは、ビジネスの世界でも同じことが言えます。
商品やサービスを提供する「中の人」2の姿が見えると、消費者は親近感を覚えます。例えば、パン屋さんが真夜中から仕込みを始める様子を投稿したり、新商品開発の試行錯誤を赤裸々に語ったり。そんな投稿を見ると、思わず応援したくなりませんか?
ブログやSNSは、まさにこの「中の人」の姿を見せる最適な手段なのです。単なる商品紹介ではなく、働く人々の思いや、製品が生まれた背景を伝えることで、読者との心理的な距離をぐっと縮めることができます。
アートと「中の人」の関係性について(補足)
ここで、ちょっと大事な補足を。
前段で、作家の人物像を知ると作品に親しみが湧くと述べましたが、これは誤解を招くかもしれません。アートは本来、作家の人物像がわからなくても十分に楽しめるものです。
本書でも述べられているように、”アートは頭ではなく心で見て楽しむもの”(Column1思い出美術館)です。直感的に感動したり、何かを感じ取ったりすることこそが、アート本来の楽しみ方といえるでしょう。
ではなぜ、今回アートと作家の人物像に注目したのか。それは、SNSという場において「中の人」の存在を示すことの重要性を、アートと作家の関係から学べるからです。アートは作家を知らずとも楽しめますが、作家を知ることで新たな魅力が加わる──この特徴は、SNSでの情報発信にも応用できるのです。
最近では「アート思考」(経営における創造性や革新性を高めるアプローチ)という言葉もよく目にします。この観点からも、アートには多くのヒントが隠されているようです。
著者の原田マハ氏とヤマザキマリ氏
実は、この本の著者たちも面白い経験をしています。
原田マハ氏とヤマザキマリ氏は、小説家や漫画家としてだけでなく、画家や研究者としての顔も持つ多才な方々です。そんなお二人ですが、子供の頃、あの有名な「モナ・リザ」に恐さを感じていたそうです。でも、レオナルドという人物を知ることで、その見方が大きく変わっています。
まさに、作者を知ることで作品の見方が変わる…その体験を、私たちに伝えてくれる一冊です。
今回は、アートと作者の関係から、相手の心に届くSNS投稿のヒントを探ってみました。大切なのは、「中の人」としての人物像や、商品に込めた思いを伝えること。そうすることで、読者との距離が縮まり、自然と共感が生まれてくるのです。明日からの投稿のお役に立てたなら幸いです。


