補助金の事業計画の書き方、3つのポイント(改訂版)

小規模事業者持続化補助金などの補助金の申請には事業計画が必要です。そして、事業計画は優れたものから順番に通ります。では、通る事業計画とは、どのようなものでしょう。コンサルタントに頼むべきでしょうか。いいえ、自分でできます。ポイントは「読みやすいこと」「応援したくなること」、そして「集客の方法までしっかり書くこと」です。あたりまえのように感じるかもしれませんが、実はコツが隠れています。

*本稿は2021年1月11日の投稿の改訂版です。

目次

ポイント1:まずは、読みやすいこと

「読みやすい」とは読む相手の考え方に沿っていること

ご存じのとおり、補助金は審査員が審査をします。審査員は限られた時間の中で数多くの計画書を審査しますので、その状況であなたの計画書を理解してもらうためには「読みやすい」ことが必要です。それでは「読みやすい」とはどのようなことでしょう。いくつかありますが、そのひとつに読む相手の考え方に沿っていることがあげられます。

例えば「パンにはバターがいちばんだ」と考えている人に「パンにはバターですね」と語りかければ、相手はストレスなく受け入れるでしょう。ところが「パンにはオリーブオイルが最高だと思います」と語りかけたらどうでしょう。確かにそうかもしれませんが、相手は自分とは違う考えを受け入れるために少しストレスを感じることでしょう。相手にストレスを感じさせずに伝えることがポイントです。それには相手、すなわち審査員の考え方を知る必要があります。

補助金の審査員の多くは中小企業診断士です。ですから、まず彼らにストレス無く読んでもらわなくてはなりません。そのためには、彼らの考え方を知る必要があります。

審査員が考えている「事業計画のストーリー」

中小企業診断士は企業に助言をするための国家資格です。詳しい話しは別の機会に譲りますが、その試験には根底に流れている助言のストーリー(考え方)があります。それは「自社の特長を活かし、社会の課題に、経営を革新して対応し、成長する企業」です。中小企業診断士はこのストーリーに沿った助言を勉強するのです。なお、社会の課題とは「ニーズ」や「困りごと」と読み替えると考えやすくなるでしょう。

審査員が考えている事業計画のストーリー

ですから、事業計画書は「私たちは、自社のこのような特長を活かして、社会のこのような課題に、経営を革新して(設備導入などを行って)対応し成長を目指します。そのための補助金を申請します」というストーリーで書くと、審査員に受け入れられやすくなるのです。

ポイント2:応援したくなること

社会の課題解決に触れること

次のポイントは「応援したくなる計画かどうか」です。補助金は国民の税金ですから、審査員はその事業が税金を投入するに資するかどうかも見ています。つまり社会の課題解決につながるかという視点で見ているのです。自社の都合や利益だけが書かれた計画と、社会の課題解決にまで踏み込んだ計画と、どちらを応援したくなるかはご理解いただけるでしょう。また、ポイント1で述べた審査員が考えている事業計画のストーリーに「社会的の課題」が入っていることからも、おわかりいただけるでしょう。

ところで「社会の課題解決」と書くと大げさに感じるかもしれませんが、天下国家を論じる必要はありません。あなたのお客様の課題(お客様の困りごと、ご要望)が社会の課題です。ですから「弊社の顧客から、このような困りごとが寄せられています。この困りごとを解決するために〜」と展開するだけで十分に「社会の課題解決」に該当します。

自分の言葉で伝えること

経営者は日々の会社経営に忙殺されますので、事業計画を作成する時間の捻出は難しいことはわかります。コンサルタントなどに外注すると体裁はきれいに整いますが、経営者ご自身で書かれたものと比べて熱量や迫力に欠けます。私はそのような計画書を数多く見てきました。多少見栄えが悪くても、経営者自身が書いた計画書は伝わり方が違います。読んでいて応援したくなる計画書はどちらであるか、これもご理解いただけると思います。

ポイント3:集客の方法までしっかり書くこと

集客方法の記載で競争力が上がる

補助金の相談などを受けていて、集客の具体的な内容が不足している計画をよく見かけます。例えば小規模事業者持続化補助金の事業計画では販路開拓の取組内容が求められます(*1)。販路開拓ですから集客方法の説明が必要ですが、公開されている申請書の記載例(*2)には「ホームページを開設して情報発信する」や「インスタグラム、フェイスブックを活用し、新規顧客獲得に努める」程度の記載しかありません。記載例と同じレベルで書けば良いように思えますが、この記載例は普通レベルと考えた方がよいでしょう。私が目を通した計画で、ここをしっかり書けているものは少数でした。集客方を具体的に記載すると計画の実現可能性が高まりますし、他の計画に比べて説得力が高まります。つまり計画書の競争力が上がるのです。

集客方法の書き方

集客方法の説明のポイントは「誰に」「何を」「どのように」伝えるです。「誰に」は対象とする顧客、「何を」は顧客のニーズや御社の強み、「どのように」はホームページやSNSなどのツールや表現方法などが該当します。対象とする顧客や顧客ニーズ、御社の強みは、既に(経営計画の2や3)で述べているはずなので、それを簡潔に整理して記載すればよいでしょう。

集客方法のポイント
集客方法のポイント

なお、表現方法については、(方向性くらいまで書けるとベストですが)申請書の段階でそこまで考えを進めることはできないと思いますので、割愛しても構わないでしょう。

まとめ

通り事業計画の3つのポイント

通る事業計画についてご紹介してきました。通る事業計画のポイントは「読みやすいこと」「応援したくなること」、さらに「集客方法をしっかり書くこと」です。

特に、ポイント1でお伝えした「私たちは、自社のこのような特長を活かして、社会のこのような課題に、経営を革新して対応して成長を目指します。そのための補助金を申請します」というストーリーは、その他のポイントの土台にもなりますので、しっかり押さえていただければと思います。

「桃太郎のストーリー」を使うと考えやすくなる

しかし、いきなりこれらのポイントを意識して書けといわれても、すぐには難しいでしょう。特に「審査員のストーリー」は経営用語がでてくるので、とっつきにくいかもしれません。ところが、皆さんがご存じの昔話「桃太郎のストーリー」に置き換えると、とたんに考えやすくなります。

お話が長くなりますので、これは次稿でお伝えします。

事業計画などのご相談を承っています。

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